認知症の親の家での過ごし方は、毎日くり返すシンプルな形にするのがいちばんです。着替え、食事、散歩、寝る前のひとときといった決まった場面に短い活動をひとつずつ添え、曜日ごとにゆるいテーマを決め、すぐ使える道具を箱にまとめておきます。新しくて刺激的なことより、なじみがあって見通しの立つことの方が、ご本人も家族も楽に過ごせます。
一つひとつの遊びのアイデアは高齢者が家で楽しめる室内の遊びと趣味でもご紹介しています。この記事では、疲れた平日でも続けられる「しくみ」として、1日の流れ、1週間の予定表、お楽しみ箱の3つをまとめます。
種類の多さより、毎日の流れが大切な理由
家で認知症の親を支える毎日は、それだけで大変です。「次は何をしよう」と1日に何度も考えるのは、思った以上に疲れます。決まった流れがあれば、その迷いが減ります。
ご本人にとっても、見通しの立つ1日は安心につながりやすいものです。「朝ごはんの後は散歩」「お昼の後は歌」とわかっていると、これから何が起こるのかという不安が小さくなります。
ただし、期待しすぎないことも大切です。活動や生活リズムで認知症を止めたり、進行を遅らせたりできるという根拠はありません。もたらしてくれるのは、楽しさ、安心、役割、そして家族みんなの穏やかな時間です。
1日の流れ
1日を「どのみち起こる場面」のつながりと考え、それぞれに小さな活動をひとつ結びつけます。時間はご本人の習慣に合わせて変えてください。
朝:1日を始める
- 決まった場面。 起きる、顔を洗う、着替える、朝ごはん。
- 活動(15分)。 お湯をわかす間に、お箸を並べる、新聞を取ってくるなどのお手伝い。そのあと短い散歩か、日の当たる窓辺でひと休み。
朝は頭がすっきりしていることが多いので、少し考える活動、たとえば大きな文字のパズルや一緒に料理をするのに向いています。
昼前:手と頭を使う
- 決まった場面。 10時のお茶。
- 活動(15分から20分)。 やさしいパズル、慣れたトランプ遊び、洗濯物たたみなど。
昼:食事と人とのふれあい
- 決まった場面。 昼ごはん。
- 活動。 準備を手伝ってもらいます。野菜を洗う、おにぎりをにぎる、お皿を並べる。離れて住む家族との電話やビデオ通話も、この時間に入れやすいでしょう。
午後:穏やかで、なじみのあること
- 決まった場面。 お昼寝や休憩のあと。
- 活動(15分)。 歌を聴く、アルバムを見る、一緒にテレビを見て感想を話す、植木に水をやる。
夕方は落ち着かなくなる方もいます。決まった時間に、明るい部屋で、音を少なめにして、なじみのある活動をすると過ごしやすくなることがあります。
夜:1日を締めくくる
- 決まった場面。 夕ごはん、寝る支度。
- 活動(10分)。 ハンドクリームを塗りながらの手のマッサージ、静かな音楽、今週のカレンダーを見ながら明日の話をする。
1週間の予定表
曜日ごとにゆるいテーマを決めておくと、毎日ゼロから考えずにすみます。大きな紙に書いて、冷蔵庫に貼っておきましょう。
| 曜日 | テーマ | 午前のアイデア | 午後のアイデア |
|---|---|---|---|
| 月曜日 | 台所 | 白玉だんごを作る | 昔のレシピの話 |
| 火曜日 | 音楽 | 好きな歌の一覧を作る | 懐かしい歌番組を見る |
| 水曜日 | 外 | いつもの道を散歩 | 庭やベランダの花の世話 |
| 木曜日 | 言葉 | 大きな文字の文字さがし | ことわざの続きを話す |
| 金曜日 | 家族 | 孫とビデオ通話 | アルバムを見ながら思い出話 |
| 土曜日 | 手仕事 | 洗濯物たたみ、ボタンの仕分け | 季節の花を生ける |
| 日曜日 | ひと休み | 近くの喫茶店でお茶 | 好きな時代劇や古い映画 |
予定表は決まりではなく、メニューと考えてください。木曜日が疲れた日なら、土曜日のアイデアと入れ替えてかまいません。テーマは大きな字で書くと、ご本人も見ることができます。
お楽しみ箱
いつも座る椅子の近くに箱をひとつ置いておくと、数秒で何かを差し出せます。家族だけでなく、訪ねてきた親戚やヘルパーさんも使えます。靴箱やふた付きのかごで十分です。
入れておくもの
- 小さなアルバム。 大きめの写真に、名前を書き添えて。
- 手ざわりのよい布。 スカーフ、手ぬぐい、やわらかいタオル。
- 大きな文字のトランプ。 柄ごとに分けたり、簡単な遊びに。
- 印刷したパズルを2、3枚と、やわらかい鉛筆。
- ボタンの缶や大きめの木の洗濯ばさみ。 仕分け用に。
- たたむためのふきんやハンカチ。
- なじみのある香りのハンドクリームやにおい袋。
- 好きな歌の一覧。 スマホや小さなスピーカーをそばに。
- 仕事や暮らしにゆかりのある品をひとつ。 そろばん、巻き尺、料理の本、鍵の束など。
長く使うコツ
- 2週間ごとに入れ替える。 中身を少し変えると、新鮮さが続きます。
- 大人向けのものを。 子どものおもちゃのように見えるものは避けます。
- テーブルの上に開けて置く。 ご本人が自分から手を伸ばすこともあります。
- ふたにカードを貼る。 「アルバムを一緒に見る」など3つのアイデアを書いておくと、訪問した人も始めやすくなります。
ほかの人と共有する
きょうだいやヘルパーさんが手伝ってくれる場合、予定表とお楽しみ箱があると、関わり方をそろえやすくなります。「歌謡曲が好き」「夕方4時以降は疲れやすい」など、うまくいったことのメモも添えましょう。
介護する家族の休息も、予定に入れておいてください。デイサービスの利用や、介護の悩みの相談は、親が住む地域の地域包括支援センターで受け付けています。ひとりで抱え込まないことが、続けるいちばんのコツです。
印刷して使えるもの
SilverMindの印刷用プリントは大きな文字で答え付きなので、お楽しみ箱に入れておくのにぴったりです。
- ひらがな文字さがし:花と自然、ひらがな文字さがし:食べもの。木曜日の「言葉の日」に。
- ことわざを完成させよう。なじみのあることわざで、会話のきっかけに。
- 仲間はずれはどれ?、まちがいさがし:5つのちがい。のんびりできる言葉と絵の遊び。
- おぼえて書こう:言葉の記憶、点つなぎ:1から25まで。調子のよい朝に、一緒に。
手作りのアイデアもあります。
- 今週のカレンダー。 7つの大きな枠に、来客、電話、お出かけをひとつずつ書き、夜に一緒に読みます。
- 写真カード。 家族の写真に名前と短い説明を添えて、箱に入れておきます。
- レシピカード。 「料理の名前」「教えてくれた人」「材料」の欄を作り、台所の日に一緒に書きます。
ほかのプリントの選び方は高齢者向けワードサーチ(大きな文字)でもご紹介しています。
SilverMindについて(私たちのアプリ)
私たちはSilverMindというiPhone・iPad向けアプリを作っています。高齢の方のための穏やかな28種類のエクササイズがあり、大きな文字、大きなボタン、広告なしで、時間制限のないエクササイズも多くあります。1日3つ、約6分の短いメニューは、上の「昼前」の時間にちょうど収まります。家での毎日には、言葉さがし、昭和から平成の歌や暮らしを振り返るなつかしクイズ、お買い物リスト、ことわざ完成がなじみやすいでしょう。日本語に対応しており、ブラウザ版もsilvermind.app/playで使えます。SilverMindプレミアムは7日間の無料体験から始められます。
アプリは1日の中の選択肢のひとつで、治療ではありません。画面が負担になるようなら、お楽しみ箱があれば十分です。
変化に気づいたら
気分や睡眠、できることに急な変化があったときは、かかりつけ医に相談してください。物忘れへの接し方や相談先は親の物忘れがひどいと感じたらにもまとめています。
まとめ
認知症の親の家での過ごし方に、特別な工夫はいりません。1日の決まった場面に短い活動をひとつずつ結び、曜日ごとに簡単なテーマを決め、なじみのある品を箱にまとめて手の届くところに置く。うまくいったことはくり返し、合わなかったことはやめて、穏やかに過ごせた1日を成功と考えましょう。
参考情報
- 厚生労働省 地域包括ケアシステム - 地域包括支援センターなど相談のしくみ
- 公益社団法人 認知症の人と家族の会 - 電話相談・家族の集い
- 国立長寿医療研究センター - 高齢者の医療と認知症に関する情報


