物忘れが増えた親とできることは、昔から慣れ親しんだ、短くて失敗しにくいことです。台所の手伝い、洗濯物たたみ、植木の水やり、古い写真を眺める、若いころの歌を聴く、近所の散歩、大きな文字のパズルなどが向いています。「思い出してもらう」ことより、「一緒に気持ちよく過ごす」ことを目的にしましょう。
物忘れが増えると、ご本人は「また忘れたと思われたくない」と内心で緊張していることがあります。テストのように感じる遊びは、せっかくの午後を気まずくしてしまいます。反対に、いつもの暮らしの一部のように感じられることや、本当に誰かの役に立つことは、穏やかな時間をつくってくれます。
親の物忘れそのものが心配なときの声のかけ方や相談先は、親の物忘れがひどいと感じたらにまとめています。この記事では、毎日の過ごし方に絞ってご紹介します。
まず「親がどんな人か」から考える
活動のリストを探す前に、親の人生について10分ほど書き出してみてください。
- 仕事。 教員、看護師、商店、農業、経理、家庭を守ってきた人など。
- 手仕事。 料理、裁縫、編み物、大工仕事、庭いじり。
- 場所。 生まれ育った町、旅行先、よく通ったお店。
- 音楽や行事。 好きだった歌手、唱歌、お祭りやお寺の行事。
- 家族の中での得意分野。 「お母さんの煮物」「お父さんの将棋」など。
経理をしていた方なら領収書を封筒に分ける作業、庭仕事が好きだった方なら球根の植え付け、先生だった方なら孫に何かを教える時間。こうした「その人らしさ」に合わせた活動が、どんな一般的なリストよりも良い出発点になります。
役に立つと感じられる家事
楽しませてもらうより、役に立ちたいと考える方は多いものです。遊びとしてではなく、本当のお手伝いとして頼んでみてください。
- 台所。 じゃがいもを洗う、さやえんどうの筋を取る、ごまをする、食卓にお箸を並べる。
- 洗濯。 タオルをたたむ、靴下を組にする、洗濯ばさみを外す。
- 仕分け。 ボタンの缶、引き出しのスプーンとフォーク、銀行に持っていく小銭。
- 紙もの。 手紙を封筒に入れる、切手を貼る、チラシを折る。
- 片付け。 棚のほこりを払う、テーブルを拭く、靴をみがく。
タオルのたたみ方が少し違っていても、そのままにしておきましょう。「助かったよ、ありがとう」と伝えることが、いちばんの仕上げです。
手を使う作業
手を動かす作業は、言葉が出にくい日でも楽しみやすいものです。
- 植木鉢に土を入れる、ミニトマトやハーブの世話をする
- 毛糸玉を巻く、慣れた編み方で簡単なものを編む
- 豆やボタンを色ごとに分ける
- おだんごやパン生地をこねる
音楽・写真・昔の道具
- 若いころの歌。 20代のころによく聴いた歌は、自然に口ずさめることがあります。唱歌、歌謡曲、演歌など、親の好みに合わせて選びます。
- 写真。 アルバムを1冊選び、「この時の話を聞かせて」と頼みます。名前や年を当ててもらうのではなく、話を聞く側に回りましょう。
- 昔の道具。 そろばん、手ぬぐい、古いお茶の缶など、手に取って話せるものを用意します。
外の空気にふれる
散歩、ベランダでのお茶、近所の公園のベンチ、季節の花を見に行く短いお出かけ。疲れやすい場合は、座って過ごせる場所を選びます。同じ道を歩くと安心しやすく、顔なじみの人とあいさつする機会にもなります。
頭を使う遊びは、やさしく短く
大きな文字の文字さがし、ことわざの続き、少ない枚数でのトランプの神経衰弱などは、一緒に楽しむ形にすると和やかです。点数や時間を気にせず、二人で一緒に解くのがコツです。ほかの例は高齢者の記憶力ゲーム20選にもあります。
その日の調子に合わせて選ぶ
物忘れが増えると、調子のよい日とそうでない日の差が出やすくなります。目安は次のとおりです。
| 調子のよい日 | 疲れている日 |
|---|---|
| 一緒に簡単な料理をする | 野菜を洗う、かき混ぜる |
| 近所のお店まで歩く | 庭やベランダで座って過ごす |
| 文字さがしやトランプ | ボタンの仕分け、タオルたたみ |
| アルバムを見ながら話す | 好きな歌を聴く |
断られたら、時間をおいてもう一度声をかけます。あるいは自分が先に始めて、親が加われる余地を残しておくのも方法です。
試すような声かけを避ける
言い方を少し変えるだけで、空気はずいぶん変わります。
- 「覚えてる?」ではなく、「あのとき、こんなことがあったね」
- 「この字は何?」ではなく、「ここで迷っちゃった。どう思う?」
- 「さっきもやったでしょ」ではなく、「ありがとう、助かるよ」
- 「頭の体操をしよう」ではなく、「お茶を飲みながら一緒にやらない?」
「何がしたい?」と聞くより、「午後は庭いじりと歌、どっちにする?」と2つから選んでもらう方が、ずっと答えやすくなります。
印刷して使えるもの
SilverMindの印刷用プリントは大きな文字で、答え付きです。物忘れが増えた方には、次のようなプリントが向いています。
- ひらがな文字さがし:花と自然、ひらがな文字さがし:食べもの。身近な言葉を大きなマスからさがします。
- ことわざを完成させよう。昔から知っていることわざは、すっと出てくることがあります。
- 仲間はずれはどれ?。答えがひとつとは限らないので、話がはずみます。
- まちがいさがし:5つのちがい。のんびり楽しめる絵の遊びです。
- おぼえて書こう:言葉の記憶、点つなぎ:1から25まで。調子のよい日に、一緒に取り組むのがおすすめです。
ご家庭で手作りできるものもあります。
- 写真カード。 家族の写真を1枚ずつカードにして、下に名前と場所を大きく書きます。
- レシピカード。 「料理の名前」「教えてくれた人」「材料」の欄だけの白いカード。親に書いてもらうか、話を聞きながら書きます。
- 今週のカレンダー。 7つの大きな枠に、来客、電話、お出かけを書いて冷蔵庫に貼ります。
SilverMindについて(私たちのアプリ)
私たちはSilverMindというiPhone・iPad向けアプリを作っています。高齢の方のための穏やかな28種類のエクササイズがあり、大きな文字と大きなボタン、広告なしで、時間制限のないエクササイズも多くあります。1日3つ、約6分の短いメニューを提案します。物忘れが増えた方には、昭和から平成の歌や暮らしを振り返るなつかしクイズ、ことわざ完成、仲間はずれ、ペアさがしがやさしい入り口です。日本語に対応しており、ブラウザ版もsilvermind.app/playで使えます。SilverMindプレミアムは7日間の無料体験から始められます。
ただし、これは楽しみのひとつで、治療ではありません。手を使うなじみのある活動の方が合う方も多いので、無理に勧めないでください。
かかりつけ医に相談したいとき
どんな活動にも、物忘れや認知症を止めたり、元に戻したりする根拠はありません。活動がもたらすのは、その日を少し気持ちよく過ごす時間です。混乱が増えた、道に迷った、お金の管理が難しくなった、気分が変わったといった変化に気づいたら、かかりつけ医に伝えてください。薬の影響、睡眠不足、甲状腺の病気、気分の落ち込みなど、治療できる原因が見つかることもあります。見分け方の目安は物忘れと認知症の違いをご覧ください。
まとめ
物忘れが増えた親とできることは、台所の手伝い、歌、散歩、古い写真の話など、ふだんの暮らしによく似ています。親がどんな人だったかを手がかりに、短く、お願いする形で、試さずに。穏やかな時間を毎日少しずつ重ねることが、どんな完璧な計画よりも大切です。
参考情報
- 厚生労働省 - 認知症施策や介護に関する公的な情報
- 公益社団法人 認知症の人と家族の会 - 電話相談・家族の集い
- 国立長寿医療研究センター - 高齢者の医療と認知症に関する情報


