親の物忘れがひどいと感じたとき、「年のせいかな」「認知症かもしれない」と心配になるのは自然なことです。けれど、どう声をかければよいのか、どこに相談すればよいのか、迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、親の物忘れが気になったときに家族ができることを、様子の記録、話し方、気持ちの整え方、相談先の順にご紹介します。
まずは落ち着いて、様子を記録する
物忘れが心配なときは、感じたことをメモしておくと役立ちます。
- いつ、何があったか。 「同じ話を1時間に3回した」「約束の日を間違えた」など、具体的に書きます。
- 以前との違い。 料理の味つけが変わった、好きだった趣味をやめた、身だしなみに構わなくなったなど。
- 体調や生活の変化。 よく眠れていない、食欲がない、最近引っ越した、身近な人を亡くしたなど。
記録は、医師に様子を伝えるときにも、きょうだいと話し合うときにも役に立ちます。責めるための材料ではなく、親を手助けするためのメモと考えてください。
年齢による物忘れとの違いを知る
年齢とともに、名前が出てこない、置き場所を忘れるといったことは誰にでも起こります。一方で、体験したこと自体を忘れる、暮らしに支障が出てくるといった変化は、相談したいサインです。見分け方の目安は物忘れと認知症の違いで詳しくまとめています。
公益社団法人認知症の人と家族の会の家族が「認知症ではないか」と心配しているあなたへというページも、受診の心構えや家族にできることがわかりやすく紹介されていて参考になります。
親を傷つけない話し方
物忘れの話題は、ご本人にとってとてもデリケートです。
- 責めない、試さない。 「さっきも言ったでしょ」「今日は何日?」と問い詰めると、親は自信をなくし、心を閉ざしてしまいがちです。
- 主語を「私」にする。 「お母さんが心配だから、一度一緒に診てもらえると安心なんだけど」のように、自分の気持ちとして伝えます。
- 落ち着いた時間を選ぶ。 疲れているときや、ほかの家族の前は避け、ゆっくり話せる時間にします。
- 受け入れやすい理由で誘う。 「健康診断のついでに」「最近眠れないって言っていたから」など、受診のきっかけを工夫します。
- 一度で決めようとしない。 何度かに分けて、少しずつ話を進めてかまいません。
親の気持ちを想像してみる
物忘れが増えていることに、いちばん早く気づいて不安を感じているのは、実はご本人であることも少なくありません。「迷惑をかけたくない」「認めたくない」という気持ちから、取りつくろったり、怒ったりすることもあります。
そんなときは、言葉の内容よりも、その奥にある不安に目を向けてみてください。「最近大変だったね」「何か困っていることはない?」と、気持ちに寄り添う声かけが、親が本音を話すきっかけになることがあります。
受診に付き添うときのポイント
親が相談や受診に前向きになったら、できるだけ家族が付き添いましょう。
- 事前にメモを渡す。 気になる様子を書いたメモを、受付や医師にそっと渡すと、親の前で細かく話さずにすみます。
- お薬手帳を持っていく。 飲んでいる薬は、相談のときに大切な情報です。
- 親の話をさえぎらない。 診察では、まず親自身の言葉で話してもらいましょう。補足は後からで十分です。
- 結果を一緒に受け止める。 どんな結果でも、「一緒に考えていこう」と伝えることが親の安心につながります。
イライラしてしまうときは
何度も同じことを聞かれると、つい強い口調になってしまうこともあります。親の物忘れにイライラするのは、それだけ真剣に向き合っている証拠でもあり、自分を責める必要はありません。
- 少し間をおく。 深呼吸をする、いったん席を外すだけでも気持ちが落ち着きます。
- 訂正より安心を。 間違いを正すより、「そうだったね」と受け止める方が、お互いに楽になることがあります。
- ひとりで抱え込まない。 きょうだいや友人、相談窓口に話すだけでも気持ちが軽くなります。
- 自分の時間も大切に。 介護や見守りに、自分の生活をすべて注ぎ込まないようにしましょう。
どこに相談すればよい?
- かかりつけ医。 親の体調をよく知っている医師に、記録したメモを見せながら相談するのが近道です。必要があれば専門の医療機関を紹介してもらえます。
- もの忘れ外来など専門の診療科。 もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科などが専門的に診ています。
- 地域包括支援センター。 親が住んでいる市区町村にあり、高齢者の暮らしや介護について相談できる窓口です。厚生労働省の地域包括ケアシステムのページでも紹介されています。
- 電話相談。 認知症の人と家族の会では電話相談を行っています。家族の気持ちを聞いてもらえる場所があるのは心強いものです。
離れて暮らす親の場合
遠方に住んでいると、変化に気づきにくいものです。電話やビデオ通話の回数を少し増やす、帰省のときに冷蔵庫の中や郵便物、薬の飲み残しをさりげなく見てみる、といった工夫で様子がわかることがあります。気になることがあれば、親の地域の地域包括支援センターに電話で相談することもできます。
帰省のときには、次のような点にもさりげなく目を向けてみてください。
- 同じ食品がいくつも冷蔵庫に入っていないか
- 届いた郵便物や請求書がたまっていないか
- 部屋の片付けや身だしなみが、以前と比べて変わっていないか
- 近所の人や親しい友人との付き合いが減っていないか
ひとつ当てはまったからといって、すぐに心配する必要はありません。いくつか重なる、以前とはっきり違うと感じたときに、相談を考えるきっかけにしてください。
一緒に楽しめる時間をつくる
心配ごとがあるときこそ、親子で楽しく過ごす時間を大切にしたいものです。昔の写真を見ながら思い出話をする、散歩に出かける、将棋やトランプで遊ぶ。どれも会話が生まれる良い時間です。
親がスマホやタブレットに慣れているなら、帰省のときに文字の大きな脳トレアプリを一緒に試してみるのもよいでしょう。たとえばSilverMindは、高齢の方のために作られたiPhone・iPad向けアプリで、大きな文字と大きなボタン、時間に追われない作りになっており、毎日約6分のトレーニングを無理なく続けられます。好きな時刻に控えめなお知らせを出す設定も選べます。ただし、脳トレで物忘れが改善する、認知症を防げるということは証明されていません。あくまで親が楽しめるなら、という気持ちで勧めてください。アプリ選びのポイントは高齢者向け脳トレアプリの選び方でまとめています。
まとめ
親の物忘れがひどいと感じたら、まずは責めずに様子を記録し、親の気持ちを大切にしながら相談先を一緒に考えましょう。家族だけで抱え込まず、かかりつけ医や地域包括支援センター、電話相談などを頼ってください。



