親が暇を持て余しているように見えたら、趣味のリストを渡す前に、何が懐かしいのかを聞いてみてください。年を重ねてからの退屈は、多くの場合、仕事、運転、友人、配偶者、続けにくくなった趣味といった「役割」を失ったことから生まれます。役割や人とのつながりを取り戻せる小さなことをひとつ選び、手伝いを頼む形で、最初は一緒にやってみましょう。
多くの家族は、その反対から始めてしまいます。パズルの本の山、教室のパンフレット、ゲームを入れたタブレット。こうしたものも後から役に立ちますが、それだけだと「自分で暇をつぶしてね」と伝わりがちで、退屈している親が本当に求めているものとは少しずれてしまいます。
年を重ねてからの退屈が生まれる理由
退屈は、やることがないからではなく、「大切だと思えること」がないから生まれることがほとんどです。よくある理由を挙げます。
- 退職。 仕事は、1日の流れ、同僚、頼りにされる実感をくれていました。
- 運転をやめた。 免許を返納すると、思い立って買い物や友人宅、お寺へ行くことが難しくなります。
- 人との別れ。 友人が子どもの近くへ引っ越したり、亡くなったりします。
- 耳や目の衰え。 読書、テレビ、会話、手芸が難しくなり、いつのまにかやめてしまいます。
- 痛みや疲れ。 立ち仕事や歩くこと、細かい手作業が負担になります。
- 配偶者の介護。 毎日が相手の世話を中心に回ります。
- 家族が手伝いすぎる。 料理、買い物、支払いを家族が引き受けると、親は家での役割を失ってしまいます。
退屈と孤独は、たいてい一緒にやってきます。だからこそ、軽く考えずに向き合いたいところです。
退屈の裏に、別の理由があることも
「暇だ」が「気持ちが沈んでいる」の言いかえであることもあります。悲しい気分が続く、好きだったことに興味をなくした、眠れない、食欲が変わった、「何のために」と口にする。こうした様子があれば、かかりつけ医への相談を勧めてください。高齢の方のうつは珍しくなく、治療できます。
物忘れが増えた、混乱することがあるといった変化も、医師に伝えたい大切なサインです。話の切り出し方は親の物忘れがひどいと感じたらを参考にしてください。
何が懐かしいかを聞く
「何がしたい?」はやめておきましょう。範囲が広すぎて、正直な答えは「別に」になりがちです。まずは過去をふり返る質問から始めます。
- 「仕事でいちばん楽しかったのはどんなこと?」
- 「60歳のころの、ふつうの1週間でいちばん好きだった時間は?」
- 「会いたいなと思う人はいる?」
- 「前は作ったり直したりしていたのに、やめてしまったことはある?どうしてやめたの?」
- 「ひとつだけ取り戻せるとしたら、何がいい?」
- 「この家で、今でもお父さん(お母さん)がいちばん詳しいことは何?」
答えの奥にある理由に耳を傾けてください。「お店が懐かしい」は、お客さんとのおしゃべりが懐かしいのかもしれません。「運転したい」は、土曜日のホームセンター通いが恋しいのかもしれません。選ぶ活動は、そのものずばりでなくても、その理由を取り戻せるものであれば十分です。
役割から選ぶ活動リスト
取り戻せるものごとに分けました。親が懐かしいと言ったことに合うものを選んでください。
頼りにされる
- 誰かのために料理をする。 下宿している孫への煮物、一人暮らしのご近所へのおすそ分け、地域の行事の炊き出し。
- 技を教える。 編み物、大工仕事、漬物、そば打ち、書道、将棋の手。
- 繕う、直す。 取れたボタン、がたつく椅子、自転車。
- 家族の用事を手伝う。 年賀状の宛名書き、法事の段取り、古い写真の名前書き。
仲間に加わる
- ボランティア。 図書館、学校の見守り、地域の清掃、子ども食堂など、週に数時間からできるものがあります。
- 一緒に何かをする集まり。 合唱、地域の花壇、囲碁や将棋のクラブ、ウォーキングの会、老人クラブ、地域のサロン。
- 働く。 経験を生かして短時間働ける、シルバー人材センターという選択肢もあります。
- いつもの顔ぶれとのお茶。 同じ喫茶店に同じ時間に通うと、顔なじみができます。
作る、育てる
- プランターや小さな畑。 毎日の世話が必要なものが向いています。
- 進み具合が見える手仕事。 刺し子、模型、週に1枚の絵手紙。
- 自分史づくり。 週に1ページ思い出を書く、家族が聞き取って録音する。
学ぶ
- 公民館やカルチャーセンターの講座。
- 前から気になっていたこと。 郷土の歴史、野鳥、星空、行ったことのない国。
- 新しい道具。 タブレットでのビデオ通話、オーディオブック、大きな文字での読書。
毎日の小さな楽しみ
すべてに大きな目的がなくてもかまいません。朝のパズル、毎日同じ時間のラジオ、新聞を買いに行く散歩でも、1日にめりはりが生まれます。家で楽しめることは高齢者が家で楽しめる室内の遊びと趣味にもたくさんあります。
口うるさくならずに始めてもらうには
良いアイデアも、指示として届くとうまくいきません。次のような伝え方を試してみてください。
- 活動を勧めるより、手伝いを頼む。 「料理教室に行ったら」より「お父さんの卵焼き、うちの子に教えてくれない?」の方が引き受けやすいものです。
- とても小さく始める。 3か月の講座ではなく、公民館に1本電話をするところから。
- はじめの数回は一緒に。 最初の合唱の練習に付き添う、最初のジグソーパズルは隣に座る。
- 今ある習慣にくっつける。 朝のお茶のあとにパズル、昼ごはんのあとに散歩。
- 障害を取り除く。 送り迎えの手配、合う眼鏡、タブレットの設定、大きな文字の版さがし。
- 断られても気にしない。 1週間おいて、別のアイデアを。押しつけは逆効果になりがちです。
- 先生のようにほめず、気づいて感謝する。 「えらいね」より「このきゅうり、おいしい。少しもらっていい?」。
印刷して使えるもの
ひとりの静かな時間には、SilverMindの印刷用プリントも使えます。大きな文字で答え付きです。
- ひらがな文字さがし:花と自然、ひらがな文字さがし:食べもの。
- ことばの並べかえ、ことわざを完成させよう、四字熟語の穴うめ。言葉が好きな親に。
- 次はどの数? 数のならび、お買い物の計算。経理や技術の仕事をしていた方、数字が好きな方に。
- 仲間はずれはどれ?、まちがいさがし:5つのちがい。数分の息抜きに。
- おぼえて書こう:言葉の記憶、点つなぎ:1から25まで。朝の軽いパズルに。
役割が組みこまれた手作りのアイデアもあります。
- レシピカード。 家の料理を1枚ずつ親に書いてもらい、家族のレシピ帳にします。
- 写真カード。 古い写真の裏に「誰と、どこで、いつ、そのあと何があった?」と書き、親に答えを書いてもらいます。
- 今週のカレンダー。 毎日ひとつ楽しみを大きな字で書き、台所に貼っておきます。
SilverMindについて(私たちのアプリ)
私たちはSilverMindというiPhone・iPad向けアプリを作っています。高齢の方のための穏やかな28種類のエクササイズがあり、大きな文字、大きなボタン、広告なしで、時間制限のないエクササイズも多くあります。1日3つ、約6分の短いメニューは、静かな朝の小さな習慣になります。昭和から平成の歌や暮らしを振り返るなつかしクイズ、ことばの輪、ミニナンプレ、次はどれから始める方が多いです。日本語に対応しており、ブラウザ版もsilvermind.app/playで使えます。SilverMindプレミアムは7日間の無料体験から始められます。
アプリで埋められるのは10分ほどです。頼りにされることや人と過ごすことの代わりにはならないので、ちょっとしたおまけと考えてください。
まとめ
暇を持て余している高齢の親に必要なのは、楽しませてもらうことより、役割と人とのつながりであることがほとんどです。何が懐かしいのか、それはなぜかを聞き、それを取り戻せる小さな活動をひとつ選び、手伝いを頼む形で、最初は一緒にやってみましょう。気分の落ち込みやほかの変化をともなうときは、かかりつけ医に相談してください。いろいろな遊びのアイデアは高齢者の脳トレ:家で楽しめる簡単なアイデア集にもあります。
参考情報
- あなたはひとりじゃない - 政府の孤独・孤立対策による相談窓口の案内
- 厚生労働省 - 高齢者の暮らし、介護、こころの健康に関する公的な情報
- 国立長寿医療研究センター - 高齢者の医療と健康に関する情報


