高齢者の脳トレは、特別な道具がなくても今日から始められます。新聞のパズル欄、家族とのしりとり、スマホで数分の問題。大切なのは「頭のためにがんばる」ことより、「楽しいから続く」ことです。
この記事では、簡単に始められる脳トレのアイデアを、紙とペン、会話、デジタルの3つに分けてご紹介します。あわせて、無理なく続けるコツと、脳トレの効果について今わかっていることも正直にお伝えします。
脳トレについて知っておきたいこと
頭を使う時間をもつことは、体を動かす、よく眠る、人と話すといった習慣と並んで、毎日を生き生きと過ごすための工夫のひとつです。世界保健機関(WHO)も認知症に関するファクトシートの中で、体を動かすことや、人と交流し頭を使う活動を続けることなどを、健康的な生活習慣として挙げています。
一方で、脳トレそのものの効果については、研究結果がまちまちで、はっきりした結論は出ていません。練習した問題は上手になりやすいものの、それが日常生活の力全体にどこまで広がるかは限られている、というのが現時点での一般的な見方です。「認知症予防ゲーム」とうたう商品も見かけますが、ゲームで認知症を防げることは証明されていません。
ですから脳トレは、義務にするより「面白いからやる」くらいがちょうどよいのです。
高齢者に合う脳トレの選び方
始める前に、次のポイントを意識してみてください。
- 楽しいこと。 宿題のように感じると長続きしません。
- ちょうどよい難しさ。 少し考えれば解ける程度が理想です。
- 見やすいこと。 大きな文字、はっきりした色の違い、押しやすいボタン。
- 急かされないこと。 制限時間やカウントダウンは焦りのもとになりがちです。
- いろいろな種類。 言葉、数字、記憶、図形を入れ替えると、使う力も変わります。
- 人と一緒にできること。 会話が生まれるのも大きな楽しみです。
紙とペンでできる簡単な脳トレ
書店の脳トレ本や新聞のパズル欄のほか、「脳トレ 高齢者 無料プリント」と検索すると、印刷して使える問題も見つかります。SilverMindの無料の脳トレプリントも、大きな文字で答え付きです。
漢字パズル・クロスワード
熟語を完成させる穴埋めや、文字の大きなクロスワードは、言葉を思い出す練習になります。読めるけれど書けない漢字に出会うのも、ちょっとした発見です。
簡単な計算
一桁の足し算や引き算、おつりの計算など、やさしい問題をテンポよく解くのも定番です。正確さを大事にして、速さは気にしなくてかまいません。レベル別の例題は高齢者の計算脳トレにまとめています。
間違い探し
2枚の絵を見比べて違いを探します。気軽に取り組めて、細かいところに注意を向ける練習になります。疲れている日にもおすすめです。
ナンプレ(数独)
数字を使った論理パズルです。いきなり9×9でなく、4×4や6×6の小さなマスから始めると楽しく入れます。
ことわざ・四字熟語の穴埋め
「急がば○○」「石の上にも○○」のように、一部を隠して答えを考えます。ご家族やお友だちと出し合うと盛り上がります。
会話で楽しむ頭の体操
道具がいらず、人と話すきっかけにもなるのが会話型の脳トレです。
- テーマしりとり。 「食べ物だけ」「地名だけ」と縛りをつけると、ぐっと頭を使います。
- 思い出話。 子どものころの遊び、昔住んでいた町、地元のお祭り。写真を見ながら話すと記憶がよみがえりやすくなります。
- 昨日のふり返り。 昨日の夕ごはんや、会った人を順番に思い出してみます。
- なぞなぞ・クイズ。 お孫さんと出し合うのも楽しい時間です。そのまま使える問題は答え付きの簡単な脳トレクイズでご紹介しています。
- 将棋・囲碁・オセロ・トランプ。 神経衰弱は記憶、七並べや花札は先を読む力を使います。
- 歌。 童謡や昔のヒット曲の歌詞を思い出しながら歌うのも、立派な頭の体操です。
スマホやiPadで楽しむ脳トレ
アプリの良いところは、思い立ったときに数分だけ取り組めることと、腕前に合わせて問題の難しさが変わるものが多いことです。選ぶときは、文字の大きさ、広告の有無、制限時間で急かされないかを確認しましょう。詳しくは高齢者向け脳トレアプリの選び方でまとめています。
たとえばSilverMindは、高齢の方のために作られたiPhone・iPad向けの脳トレアプリです。大きな文字と大きなボタンで、1画面にひとつのことだけ表示し、時間に追われることはありません。毎日3つのトレーニングを組み合わせた約6分のメニューが用意され、「ペアさがし」「言葉さがし」「ことわざ完成」「ミニナンプレ」など一部のトレーニングは期間の制限なし・広告なしで無料で使えます。
使う力で選ぶ脳トレの組み合わせ
同じ種類の問題ばかりだと飽きてしまいます。使う力の違うものを、日替わりで組み合わせてみましょう。
| 使う力 | 脳トレの例 |
|---|---|
| 記憶 | 神経衰弱、買い物リストを覚える、昨日のふり返り |
| 言葉 | しりとり、漢字の穴埋め、ことわざクイズ |
| 計算 | やさしい足し算・引き算、おつりの計算 |
| 注意 | 間違い探し、文字さがし、仲間はずれ探し |
| 考える力 | ナンプレ、将棋やオセロ、なぞなぞ |
たとえば月曜は言葉、火曜は計算、水曜は記憶というように決めておくと、「今日は何をしよう」と迷わずにすみます。得意なものばかりでなく、ときどき苦手な分野にも挑戦すると新鮮です。
ご家族と一緒に楽しむ工夫
脳トレは、家族のだんらんの時間にもなります。お孫さんとなぞなぞを出し合う、帰省したときに将棋を一局指す、電話でクイズを出し合うなど、ひと工夫で会話が弾みます。
ご家族が気をつけたいのは、「テスト」のような雰囲気にしないことです。間違えても笑って流し、できたことを一緒に喜びましょう。「頭のために」と勧めるより、「一緒にやろう」と誘う方が、ご本人も気持ちよく参加できます。
無理なく続けるコツ
- 時間を決める。 朝のお茶のあと、昼食後など、毎日の流れに組み込むと忘れにくくなります。
- 短く終える。 5分から15分で十分です。「もう少しやりたい」くらいでやめると、次の日も楽しみになります。
- 記録をつける。 カレンダーに丸をつけるだけでも、続けた実感がわきます。
- 難しすぎたら戻る。 解けない問題が続くときは、一段やさしいものに戻してかまいません。
- ほかの楽しみとも組み合わせる。 散歩や体操、おしゃべり、趣味の時間も大切です。家でできる楽しみは高齢者が家で楽しめる室内の遊びで、記憶力を意識した日々の工夫は高齢者の記憶力トレーニングでご紹介しています。
まとめ
高齢者の脳トレは、紙のパズルでも、会話でも、アプリでもかまいません。見やすく、急かされず、ちょうどよい難しさのものを選び、短い時間を楽しく続けることがいちばんのコツです。もし物忘れが急に増えた、以前と様子が違うと感じたら、脳トレで様子を見るのではなく、かかりつけ医に相談してください。



